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    西表島には一体どんな珍しい植物が生育しているのか?

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    西表島には一体どんな珍しい植物が生育しているのか?

    西表島は沖縄では本島に次いで二番目に大きい島です。大小合わせて40本程度の河川が流れており、ほとんどの河口近くには発達したマングローブ林があります。気候は亜熱帯海洋性気候で年間通しての平均気温は23℃と過ごしやすく島の人口は約2,000人で14の集落が島内に点在しています。島の主な産業は観光業の他に農業(パイナップル、稲作、さとうきびなど)や牧畜業(牛)、漁業等です。

    「東洋のガラパゴス」と呼ばれる八重山諸島に属する西表島ですが、島全体の90%が何と原始林に覆われています。ここが同じ日本か?と思うような奥深いジャングルが広がっており1972年には国立公園の指定を受けています。まだ手付かずの大自然には、ここにしか生息しないユニークな動植物が数多く存在しています。

    今回は特に植物に絞ってお伝えしましょう。取り上げる植物は有名なマングローブと亜熱帯雨林の西表島に生育しているユニークな植物たちばかりです。

     

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    mangrove

    多くの方が誤解されていますが、このマングローブという名称は植物の名前ではありません。熱帯や亜熱帯地域で海水と淡水が混ざる特殊な環境(汽水域と呼ばれますが)そのようなエリアに生育する植物の総称なのです。

    ちなみに西表島でマングローブを構成している植物は7種類あってその内訳は、「オヒルギ」「メヒルギ」「ヤエヤマヒルギ」「ハマザクロ」「ヒルギモドキ」「ヒルギダマシ」「ニッパヤシ」とされています。

    西表島の大きな河川では、干潮時には干上がってしまい、満潮時には完全に水中に沈んでしまうような非常に苛酷で特殊な環境の場所に林ができ上がっています。この林自体をマングローブと総称していて、そこに生育している個々の植物をマングローブ植物と呼んでいます。このような厳しい条件に適応する為にマングローブは実に特殊な形態を身に付けているのですね。

    以下にご紹介しましょう。

    マングローブのクチクラ層

    このクチクラ層とは、私たちがよくシャンプーのCMなどで耳にする「キューティクル」のことです。マングローブの表皮細胞から分泌されて植物全体を保護して水分の発散を防止したり、逆に外からの水や物質の透過を調整したりする調整弁の役割を持っています。

    マングローブの呼吸根

    これは空気中に露出している根のことで葉と同様に光合成を行って呼吸しています。泥の中でマングローブの根が酸素不足になるのを補うべくこの呼吸根を備えたとされています。

    マングローブの板根

    マングローブが生育しているのは足場が柔らかい湿地ですから、そこでも倒れずにしっかりと立っていられるように表面積の大きい板状の根を備えていて倒れにくくなっています。

    塩分のフィルター機能

    マングローブの木をよく観察すると緑の葉の中に一枚だけ黄色くなった葉が含まれている場合があります。海水の上で生育するマングローブですが、塩分は植物にとって有害なので一枚の葉に塩分を集中して蓄積し塩分濃度が高くなると黄色に変色して葉を落とすことで塩分を排出しているのです。優れた神秘的なシステムですね。

    本来は熱帯地方の原産でありながら、亜熱帯の西表島で生育している以下のような植物もあります。いずれもユニークな生態を持っていて実に興味深いですよ。

    ガジュマル

    日本でも観葉植物として人気があるのでご存知の方も少なくないのではないでしょうか。このガジュマルは「絞め殺し植物」という何とも物騒な別名を持っています。実際に西表島で「アカギ」と呼ばれる樹高が20メートル以上で、胸高直径が1メートルの巨木がガジュマルに万力のようにグルグルに締め付けられて、やがて枯死すると見られている実例もあります。

    一体どうしてこのような状況になってしまったのでしょうか?

    ガジュマルはイチジクのような実を付けます。その果実が鳥や動物に食べられて、種子がフンとして「アカギ」の巨木の幹などに付着すると、そこで着生して発芽します。本当に凄まじい生命力です。そして「アカギ」の巨木の幹に沿って根を下ろすと同時に長い気根(茎や幹から空中に伸びる根のこと)を地面にまで伸ばして支柱を形成します。更に多くの根が宿主の表面を覆うようになり、結果的にぐるぐる巻きにされてしまってその木は枯死してしまうのです。

    このガジュマルには東北の座敷童の民話に似た言い伝えがあります。ガジュマルには幸福をもたらす「精霊キジムナー」が宿っており、キジムナーに気に入られた家は繁盛して逆に嫌われた家は滅んでしまうというものです。

    リアナ(巨大なつる性の絡みつき植物の総称)

    私たちが熱帯地方のジャングルを想像する時にイメージするのが、何にでも絡みつくような大きなつる性植物ではないでしょうか?

    西表島にもリアナの一種である「ヒメモダマ」が生育しています。この「ヒメモダマ」はとにかく巨大で根元の直径は1メートル以上になり、ここから実に大きなつるが縦横無尽に伸び放題に伸びるのです。そのつるの長さは数百メートルにも達します!そしてナタマメのお化けのような1メートル程の実を付けます。興味深いことに、この植物は多くのサポニンを含有しているのでフィリピンなどでは茎をつぶして石鹸の代用品として利用されているようです。

    大きな板根を持つ植物

    熱帯雨林などでは樹木の根が地表に出て、しかも根の形状がまるで平べったい板状になっているものがあります。その理由としては、熱帯雨林は分解速度が早いので栄養分はすぐに植物に吸収されてしまって腐葉土のような土壌にはならず栄養分を含む表土は非常に薄くなってしまいます。そのため、根は下に伸びずに横へ伸びます。土壌自体が湿地帯の場合も多く本体自体を支えやすいように板状根となっています。

    特に西表島で板状根を持つ有名な植物としては、「サキシマスオウ」がありますが、その他にも「オキナワウラジロガシ」「イヌマキ」「ギランイヌビワ」などが一般的です。

    驚くほど巨大なシダ植物

    よく知られているものとしては「ヒカゲヘゴ」があります。見た目は巨大な「ゼンマイ」のような外観です。

    これは1億年前から生き続けている古代植物で、この「ヒカゲヘゴ」の繁茂するエリアに足を踏み入れると、まるで映画「ジュラシックパーク」の中に迷い込んだような錯覚を覚えます。そしてその大きさも古代植物らしく巨大なもので、高さは7~8メートル、葉は何と2メートル以上にもなるのです。西表島では新芽を天ぷらや酢の物にして食べているようです。

    また他のシダ植物としては「ナンヨウリュウビンタイ」があります。こちらは一枚の葉全体が5メートルにも達するとされており、日本最長の葉を持つ植物と言えます。本当に個性派ぞろいですね。

    デイゴ

    デイゴは沖縄の県花に指定されているマメ科デイゴ属に属する耐寒性落葉広葉高木であり、公園園芸や街路樹として植栽されています。THE BOOMの歌の歌詞にも出てくるのでデイゴと一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

    寒さに弱い茎と葉は互生したまごの形をしており、5月頃に新芽を出し11月頃に落葉します。また、6月から7月上旬と9月から10月の1年に二回花を咲かせます。デイゴの咲き方により台風の訪れを予測できると言われており、満開に咲いた際には強い台風が来ると言われています。

    ヤエヤマヤシ

    ヤエヤマヤシは西表島と石垣島にしか自生しない国の固有種です。環境庁のレッドリストにも記載されている稀少絶滅危惧種の木でもあります。ヤエヤマヤシは高さ20mに至ることがあり、マングローブ川の両岸に鬱蒼と生茂ります。

    西表島、石垣島のマングローブはヤエヤマヤシをはじめ、オヒルギ、メヒルギなどのヒルギ科の植物が主となっています。国の天然記念物にも指定されているので、ぜひご覧になってくださいね。

    月桃は生姜の葉と似た10cm~15cmほどの楕円形の葉を有している花木です。葉は光沢のある深緑色を呈しており、蕾は白、花弁は黄色と色鮮やかな植物です。秋頃になると卵形の赤茶色の果実を実らせ、丈は3mほどまで伸びます。月桃の歯には殺菌効果や防虫効果があるので、防虫剤や防腐剤、化粧品などにも利用されています。

    コウシュンモダマ

    コウシュンモダマは八重山諸島や台湾のパックマングローブや海岸沿いの常緑樹林に自生するツル性の植物です。木質化したツルは非常に太くなる点、ブラシ状の白い花をつけることが特徴的です。モダマの同定は非常に難しく、まだまだ未開なところばかりなんです。

    クワズイモ

    クワズイモはアロカシア属クワズイモ属に属するサトイモによく似た植物です。観葉植物として育てられるアロカシア属に属する通り、飼われているかても多いです。また、トトロが雨傘を代わりに使用していた巨大なはっぱは実はクワズイモの葉っぱなんです。西表島の山地や森林に自生しているのでジャングルトレッキング中に目にすることができます。

    そんなクワズイモですが、先ほどご紹介した通り、サトイモと酷似しているため間違って食されてしまうことがあります。ですが、クワズイモとは"喰わず芋"と呼ばれるように貯蔵茎には毒を有しており、本来食べることができません。口にしてしまうと、痺れやめまい、吐き気などを催すため、決してむやみに採取して食べないようにしましょう。

    アダン

    アダンは亜熱帯地域の海沿岸や岩石地に自生する高さ2~6mほどの常緑小高木です。しっかりとした支柱根と横方向にまばらに伸びる太めの枝が特長的であり、パイナップルのような果実の集合体を実らせます。長さ1.5m、幅3~5cm程の線状披針形の固い葉をつける、南国らしい草木です。国内では春~秋が開花時期として一般的ですが一定してはいません。

    また、アダンの実はヤシガニの好物とも知られており、アダンの木が自生する周囲編地域では夜間にヤシガニを高確率で見つけることができます。

    フクギ

    フクギは熱帯・亜熱帯地域に分布するオトギリソウ科フクギ属の熱帯性常緑高木です。幹がとても丈夫で耐火性もあることから防風林や屋敷林として植栽されます。黄緑色で肉厚かつ小楕円形の葉を対生させ、春から梅雨時期にかけて薄黄いろの小さな五弁花を咲かせます。沖縄名護市ではフクギを街路樹として植生されています。

    ニッパヤシ

    ニッパヤシは亜熱帯地域の川と海水が混ざり合う汽水域の湿地帯に生育する植物です。国の天然記念物にも指定されており、国内で自生を確認されているのは西表島のみです。葉を斜め上方向に成長させ、羽上に広がるのがとても美しい植物です。ロータリーなどに移植されていることもあるので、目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

    flower petals fallen on water, resembling a spider flower (esp. Pelecanoides urinatrix)

    サガリバナは国外では台湾や中国大陸南部、東南アジア、国内では南西諸島に分布している亜熱帯植物です。サガリバナは一夜にして花を咲き散ってしまう、とても儚い花なんです。そのため、一夜花や幻の花と呼ばれます。また、夏のシーズンに開花するので、夏に西表島・石垣島を訪れた方はぜひサガリバナ鑑賞していただきたいです。サガリバナが自生する場所は川の上流、淡水となっているエリアです。

    サンセット後から蕾を開き始め、夜中に満開を迎えます。翌朝になるとポツリと水面に花弁を落とします。バニラのような甘い香りを放ちながら満開に咲くサガリバナをもとても綺麗ですが、水面をピンクや白に埋め尽くす光景も見ものです。

    ぜひ、タイミングが合えばサガリバナカヌークルージングツアーーに参加してみてくださいね。

    ヒルギダマシ

    ヒルギダマシは塩分耐性が非常に高いため、マングローブのように河口付近に自生していることが多いです。筍根と呼ばれる呼吸根を地面に出しています。ヤエヤマヒルギやオヒルギ、メヒルギなどのマングローブ群落を形成するヒルギ科と比べると個体数は少ないです。また、ヒルギ科のように塩分耐性が強い点であるものの同属ではないことから"ヒルギダマシ"という名前が付けられました。

    ヒルギ科と比べて個体数が少ないので見つけづらいように思えますが、特徴をしっておけば簡単に見つけることができます。本種の英名はpencil rootという名前であり、その形態は鉛筆のように細長い木々が水面から直立しています。ぽつぽつと直立している植物を発見したらまずヒルギダマシで間違いないでしょう。

    おわりに

    西表島に生育している非常に珍しい植物に興味を持って、実際に見に行ってみよう!と考える方もいらっしゃると思います。でもくれぐれ注意してください。この西表島の独特の植物を見ようと思えば見通しの良い平坦なハイキングコースではなく、亜熱帯雨林のジャングルに分け入って初めて見ることができるような植物も多いです。その場合も事前にできる限り自分で勉強して知識を蓄えてから現地入りすれば理解度や感動も全然違うものになると思います。

    但し、いくら日本の亜熱帯のジャングルだと言っても遭難の危険は当然ありますから油断禁物です。絶対に一人では行かずに複数の仲間と共に行動するように心掛けてください。

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